影絵のなかのしごとうた 神奈川県 川崎市 シゴトウタナミ 

このユニークな版画を創って下さったのは
イラストレーターのカトウタエコさん。

わたしは日本にも世界にもいっぱい好きなイラストレーターや
デザイナー、画家、版画家、写真家などの皆さんがいますが、
なかでも、本当に度肝をぬかれる発想の作品や
「ユニーク」が好きです。

さて、ユニークなカトウタエコさんは、神奈川県にて、
地域の皆さんと一緒に
土地に伝わる伝説や民話を影絵にして
上演する「おと絵がたり」という活動をなさっています。

私も2作品ほど、音楽を制作させて頂いたのですが、
なかでも印象に残っているのが、
「登戸の田植唄」。

これは、わたしのなかでも、
作業量の膨大さではナンバーワンだったので、
とても印象深く、そして、作業のなかで
唄にこめられたいろんな思いに気付かされた機会でもありました。

物語は、一日ではとても終えられそうにない広い田んぼの「しろかき」を
言いつけられた少年や、早乙女、お地蔵さんが登場してくるおはなし。

そこに描かれた田植唄の歌詞がひとつあって、
これはどんなものでしょうか、というお問い合わせから、
このお話は始まりました。


最終的には、田植唄を中心にして、
上演時に、団員の皆さんである地域の方々が
自分たちで音付けが出来るよう、
お持ちの楽器を総動員して
演奏できる曲をつけることになりました。

そこで、自分から湧き上がって来る音楽を
つければ良かったのかもしれませんが、
私は、川崎市を訪ねて、その地に残る約数十曲の古謡を
調べるところからスタート。

その地で、どんな音が使われていて、
どのような音のはこびが多いのか、
その傾向を調べました。

ここで、驚いたのが、
私が日ごろ扱っている兵庫県の唄との
メロディ、歌詞のちがいでした。

兵庫県で記録されている歌詞は
おおらかで明るいものが多いのに対して、
川崎市で私が出会った歌詞は、
つらい作業を嘆いたり、
重労働を強いる上の人に対してのうらみつらみなどが
ものすごく多かったのです。

私は焦りました。

この影絵は子ども向け。
これはちょっと暗すぎるな…。

そこで、ハタと気付きます。
そういえば、物語そのものも、子ども向けに
ユーモラスに書かれているけれど、
実際には、ちょっぴり過酷なお話。
まさに、ここで見つけた唄と同じ内容だったのです。

…というわけで、
この曲を構成していく過程そのものが、
私にとっての学びでした。

「田植え」ひとつであっても、
自分たちのお米を作るために作っていた人と、
そうではない人が唄う歌詞というのは全然ちがう。

私は民謡も大好きで、
音頭も大好きなので、
長い間、いろいろな師のもとで勉強させて頂いていて、
まだまだ、その膨大な世界の隅っこに佇んでいるだけですが、
その歌詞が描いている世界は、
現代の私たちには計り知れないな、と
いうことに気付いたのです。

もともと、
民話を題材とした語りや劇などに
音楽を提供する際に心がけているのが、
現地に足を運ぶこと。

そこで、その地をゆっくりと歩いてみて、
森の香りをかいだり、耳を澄ませて動物の声を聴き、
あちこち散策してみます。

映画でもそうですが、
お話って、いろんな辻褄が合わないと、
最後に疑問が残りますよね。
たとえファンタジーであっても、
いえ、ファンタジーであればあるほど、
焦点がずれると、意味不明になってしまう。

私はその辻褄が合わないことが、
小さい頃から気になって(みんなそうかもしれませんが)
特に物語の「伏線」というものに興味を持っていました。

なぜ、こんなことをするようになったのか、
思い返してみると
幼い頃、童話作家の方について、
作詞や劇の脚本を書いては見てもらっていたのですが、
その時に、自分の頭の中だけでイメージした歌詞や言葉を、
しょっちゅう訂正されていたからだと気付きました。

当時、小学生だった私は、書いた詩や脚本を
その方の前で朗読していました。

指摘されたときは、
子どもながら「ひやり」としたことを
今も鮮明に覚えています。
さてさて、
こちらは、カトウさんを姫路にお迎えして一緒に行った
子ども向けワークショップ。

子どもたちが描いた絵を投影していきます。

カトウさんは私にとっても、
アーティストの先輩。
いろんなことを教えて頂きました。

また、一緒に子どものように作品を創りたいな〜。

「さとおと太鼓教室」のイラスト
カトウタエコ氏

カトウタエコさん、
川崎市のおと絵語りの皆さん、
姫路市の広栄保育園の皆さん、
宝塚市の売布保育園の皆さん、
ありがとうございました。

つづく…