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作曲家と演奏家による組太鼓・新作公演によせて

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岩手県花巻市にある「林風舎」を訪ねて、そこに置いてあるボンボン時計の音を、何度も何度も聴いていました。
今からちょうど1年程前のことです。そのボンボン時計は1時間に1回、とても美しいハーモニーを奏でるので、もう1度聴くためには、1時間、待たなければなりません。

それでも聴きたくて、1時間、また1時間と待っていると、ふと、宮沢賢治さんの弟・清六さんのお孫さんにあたる宮沢和樹氏が店内におみえになりました。そして、本当に偶然にもかかわらず、和樹さんは、宮沢賢治さんが生前、どのように考えておられたか、どんな音を聴いていらしたかなどのお話を約1時間にわたり聞かせてくださいました。

 

さて、今年から、おもに組太鼓を中心とした新しい作品を創っていくことを目標に「作曲家と演奏家による組太鼓・新作公演」を企画しました。

言の葉で紡がれた物語、作曲家の音の世界、そしてそれを演奏家が表現していく道のり。たくさんの手を経て、すべてが融合して生みだされて行くものを、関わる人々はもちろん、お客様とみんなで分かち合いたいという気持ちで企画しました。日本の作家、日本の作曲家、そして日本の伝統楽器の演奏家の共同作品。それに舞台の職人さんや振付けの皆さんもいらっしゃいます。
まだ見ぬ新しい世界の扉をそっと開くような気持ちです。

私のバチは、画家にたとえると絵筆のようなもの。音は絵の具です。
今回、描く情景のモチーフは、幼い頃からよく読んでいた宮沢賢治さんの作品にしよう!…と実は思った訳ではないのです。
なんだか、ごく自然に、この「インドラの網」という作品が私のもとにやってきました。

この作品をたずさえて、東京にいらっしゃる作曲家・高橋久美子さんを訪ねたのは、ちょうど2018年の5月頃のこと。
皆さんもお読みになって頂けたら分かると思いますが、「音が一体鳴っているのかいないのか」「あるのかないのか」
とても不思議な物語で、最初、謎解きをしているような気分になりました。

そして、そこで、笙と笛を加えた編成にしましょう、と高橋さんが決めてくださいました。

高橋さんとわかれて、その足で花巻に向かい、途中でこきりこ節の故郷をたずねて、五箇山に立ち寄ったのですが、なんとなく気になって足を踏み入れた最初のお寺で、ふと目をあげると、こんな天女さまたちが迎えてくださいました。

さて、そのときの花巻市、盛岡市の訪問をきっかけに、約数ヶ月の間、月の半分は兵庫に、あとの半分は盛岡市や花巻市に滞在し、山や野原を歩き回り、地域の人々に混じって芸能を学びました。

ちょうど、東日本の震災のあとから、芸能を拠り所に立ち直って来られた地域の皆さんが涙をこらえて復興を祈る場所に立ち会わせて頂くことができました。
また、ご家族で郷土芸能を楽しむ方々のもとで勉強させて頂いたり、地域の祭りに参加する人達といっしょになって、商工会議所や体育館、先生のご自宅などで行われる練習に参加させて頂き、地域の子どもから大先輩の皆さんたちと一緒に、素晴らしい時間を過ごしました。

賢治さんが生きた道のり、風や水の音といった自然はもちろんのこと、食べ物や芸能、生活、歴史、そういったものを丸ごと体験したいと考えたのです。

 

いっしょに稽古をしていた若い女の子たちが、「このあたりはよく鹿がいて、電車が停まると言えば、鹿が原因のことが一番多いよ!」と教えてくれたり、毎日毎日、1時間〜3時間ちかく歩いては稽古に通っていると、いろいろな草花や音に出会います。
賢治さんの物語のなかに登場してくる芸能、動物、自然の音や光は、花巻そのものなのだ、とつくづくと思いました。こんな体験を通して、私のなかには、すこしづつ賢治さんの世界の風が吹き渡るようになりました。

また、林風舎さんを訪ねた時に、壁にかかっている版画をみた瞬間、この作品がどうしても欲しい!と思いました。

お声をかけた方が版画家の菅原はじめさんその方でした。版画を拝見していると、私にはなんだか、賢治さんの心が宿っているような気がしてならなくて、この作品をテーマに使わせて頂くことになりました。
私にとっては、菅原さんとの作品づくりでもあるという気がしています。

さて、この公演には、ほかにも沢山の宝玉がつまっています。
そのストーリーは、今年の11月2日(土)まで続きます。

「インドラの網」とは何なのか?
「風の太鼓」とは何なのか?

ぜひ皆さんも、この作品を読んでみて頂けたら、と思います。
皆さんの心には、この世界がどのように描かれるでしょうか。

皆さんお一人おひとりの心に描いた世界、作曲家・高橋久美子さんの描かれた世界、そして私たち演奏家の世界とが、宮沢賢治さんの世界とつながったとき、この「インドラの網」が完成するような気持ちがしています。

素晴らしい方々に見守られて、この公演にたずさわれることが、本当に幸せで感謝しています。

2019年3月26日
足立七海

【神戸初演のご案内】

作曲家と演奏家による組太鼓・新作公演vol.1
New Taiko performance by Composer and Musician vol.1
風の太鼓〜インドラの網(宮沢賢治作)によせて
【DAY】2019年11月2日(土)
【TIME】17:00開場 17:30開演
【PLACE 】新長田ピフレホール PIFURE HALL(神戸市)

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